シビアな観客を退屈させないネタの展開法

ネタをするときにダラダラと変化のないストーリーを繰り広げていては観客が飽きてしまいます。
ネタの展開を盛り上げるためにはストーリーの内容に「起承転結」を付けることが必要になります。

起承転結の作り方



どのようなネタ(エピソード)を行うかを説明する部分です。

※ここに「出オチ」や「つかみ」を入れます。
※漫才やピン芸(※漫談など)の場合、舞台に登場した後に観客と絡むことができます。
客層(※年齢、性別)に合わせたトークをすることで観客の緊張感を取り除くことができます。
また、時事ネタをテーマにしたトークをするなど、アドリブ(※実際にはネタ前に即興で作っておく)を入れることもできます。
観客がこう思っているだろうということを指摘したり、あるあるネタ的なことを言います。
できればその後のネタに関係するトークで始めるのが理想です。
ちなみに、事務所・主催者が観客に絡んで笑いを誘うことを禁止している場合もあるので注意しましょう。

「どぉ~もぉ~、XXで~す、よろしくお願いしま~す」
「それにしても今日は暑っ!!
なにこの暑さっ」
『ガリガリ君食べたいわ~。
暑い日の学校帰りにアイス食べたの思い出したわ』
「買い食いしたな~」
※この後、買い食いの話でネタをします
「どぉ~もぉ~XXで~す、よろしくお願いしま~す」
「それにしても今日は暑っ!!
なにこの暑さっ」
『ところで、みなさん人の名前を思い出せないことってありません?』
「唐突やな」
※この後、名前が思い出せない話でネタをします
コントの場合は観客と絡むことはありません。
ただし歌手のような設定の場合は、実際の観客を設定の中の観客とすることはできます。
※あえて「起」の部分を謎めいた内容にして、「承」の部分で明かすという方法もあります。


ストーリーを本格的に始めます。
序盤より中盤にひねりを効かしたレベルの高いボケ方をしたり、序盤に使ったボケ方やツッコミ方を応用します。


ストーリーも終盤になり、観客がネタに慣れてくる頃です。
ネタの展開に「変化を付ける」ことで、さらに観客を引き付けます。
※「転」は、必ずしも必要ではないので、この「転」を無しにして「承」を続けても良いです。


ストーリーの終わりで「オチ」を付けます。

作る時のコツ


ネタの時間が長ければ長くなるほど観客が飽きます。
起承転結の付け方の時間配分をうまく調節する必要があります。
※舞台やネタ番組では10秒ぐらいや1分ぐらいの短いネタ、逆に10分を超える長いネタが要求されることがあります。
『M-1グランプリ』では、ネタの披露時間が1回戦は2分、2回戦と3回戦は3分、準決勝と決勝が4分となっています。
『キングオブコント』では、1回戦は2分、2回戦と準決勝は3分、決勝は5分(2009年は4分)となっています(※変更される可能性があるので注意)。

起で説明


ネタの仕方(主にピン芸)によっては「起承転結」の「起」の部分で観客に対して言葉でネタの説明をします。
ネタが少し複雑だったりする時にします。
また、説明をしながらボケたり、ツッコミを入れて笑いを取ります。

展開の仕方 9つの方法


その1. 意外性を強める
ネタの序盤は意味が伝わりやすい内容(ボケ方・ツッコミ方)にしておき、中盤以降(転)で意外性を強めたシュールな内容(常識離れや現実離れをしたボケ方・ツッコミ方)で面白さを増幅させます。
面白さというのは意外性が強まるほど高まりますが、初めから意外性が強すぎると観客が理解しきれません。
そこで序盤は「あるあるネタ」か「現実的・常識的な大げさ(※それは大げさだわ~)」で始めて、中盤は「序盤と終盤の間(※ありはしないけど大げさだわ~)」、終盤は「非現実的・非常識的な大げさ(※絶対それはないわ~)」といった感じにします。
  • 常識・現実的: 「友達の家につくのが遅れそうだから走って行った」
  • 大げさ小: 「友達の家につくのが遅れそうだから飛行機で行った」
  • 大げさ中: 「友達の家につくのが遅れそうだから背中にロケットを付けて飛んで行った」
  • 大げさ大: 「友達の家につくのが遅れそうだからオナラで空を飛んで行った」

その2. 速度を速める
ネタの序盤は結果的に終盤より間を開けた間隔で笑いを誘い、中盤以降(転)で笑いを誘う(ボケる)回数を増やして面白さを加速させます。
初めからネタの速度が速いと観客がネタの勢いについて来れないので序盤は落ち着いて始める、ということです。
あと、話し方の速度を速めるという方法もあります。

その3. 五感へのアプローチを変える
「承」の時に「言葉」をメインにしてボケ・ツッコミをしていた場合は、「転」で「動き」を使ったボケを多くします。
ネタの序盤は「言葉」で笑いを誘って「聴覚的な笑い」を作り出し、中盤以降(転)で「動き」を付けた「視覚的な笑い」も足して分かりやすい面白さを増幅させます。
ネタに動きを付けたことで単調な言葉の内容から躍動感ある内容に変化することで観客の気分を盛り上げる、ということです。
※逆に、激しい動きから言葉に変えて雰囲気を変える方法(シリアス路線に変更する方法)もあります。

その4. テンションを変える
声の大きさや体の動きの大きさ、言葉遣いを変えます。
例えば、ゆっくりと落ち着いた話し方でネタを始め、中盤以降(転)で「声の大きさ」「身振り手振りの大きさ」「言葉遣い」を変えて激しさを出して面白さを増幅させます。
  • 声: 「~じゃないですか」 > 「~じゃないですかっ!!」
  • 身振り手振り: 「~じゃないですか(相方の肩に手を置く)」 > 「~じゃないですか(相方をお姫様抱っこ)」
  • 言葉遣い: 「~じゃないですか」 > 「~だろーがっ!!」

その5. 心情に変化を付ける
ネタの序盤でネタのやり取りに平均的なイメージを作り出し、中盤以降(転)で観客を不安や疑問に思わせるイメージに変えて終盤までを釘づけにします。
それまでのネタの雰囲気(流れ)が一転すると観客は変化に気づいてストーリーにくぎ付けになります。
例えば、それまで笑いを誘っていた流れとは一転して「転」で笑いを誘うのをやめて「喜怒哀楽」を強調した展開を起こします。
内容としては、シリアスな展開やストーリーを展開させる内容にします。

その6. 人間関係に変化を付ける
人間関係(例: 仲の良さ、上下関係など)を変化させます。
ネタの序盤でキャラクターのやり取りに平均的なイメージを作り出し、中盤以降(転)で観客を不安や納得感に思わせるイメージに変えて終盤までを釘づけにします。
例えば、それまで仲が良かったキャラクター同士が一転して不仲になり、逆に不仲だったキャラクターが仲良くなるなど「横の関係」に変化を起こします。
また、上下関係があったキャラクター同士が一転して立場が入れ替わり、逆襲を始める滑稽さなど「縦の関係」に変化を起こします。

その7. 舞台裏に一旦帰る
ネタの終盤で舞台裏に行き(※ストーリー上は別の場所に行く展開)、オチのボケのセリフを言うために舞台に戻ってきます。
終盤で舞台上から人が減る(人がいなくなる)ことで流れを一旦切り、それまでの雰囲気との違いを出します。

その8. 最初に戻る
ネタの流れを一番最初に戻します。
終盤でネタの一番最初のボケをやるか、もしくは最初のテーマを再度相方にフリを入れて流れを仕切り直します。

その9. 最後だと示す
ピン芸の場合で、並列的にネタを見せる時にラストのネタになったときに「最後になりました」「これで最後です」「最後に」などと次のネタが最後だということを前もって言っておきます。

理想的な展開
「起承転結の」「転」の所にネタ中で一番面白いボケ(ひねりの効いたボケ)を入れておきます。
ネタを徐々に盛り上げていって、終盤でドカンと大きな笑いを取ると観終わった観客の満足度が高まります。

また、「転」が強調されていないネタ、もしくは「結」の「フリ」「ボケ」「ツッコミ」がそれまでの流れとは違うようなネタにしないと「オチ」が突然現れたように感じます。
要するに、「ここからオチへと向かう展開ですよ」「ここがオチですよ」と感じさせないままネタが終わりを迎えるので「えっ!今ので終わったの?」といったように観客が戸惑います。

わかりやすい例


世界のナベアツさんの『3の倍数と3の付く数字のときだけアホになります』のネタの展開が、起承転結がハッキリしていて分かりやすいです。
  1. : 舞台に登場し、ネタの説明をします。そして3・6・9でアホな言い方になり観客がネタの仕組みを理解できるようになっています。
  2. : 12・13・15と21・23・24というように連続的にアホになることで「起」のボケ方をうまく応用しています。
  3. : 30~39でボケ倒し、それまでとは違った雰囲気で(畳みかけるように)笑いを取ります。
  4. : 40のあとに「ヘ~イ」と言いながら決めポーズをしてこれで終わりだと分かりやすいようにネタを終えています。

「3の倍数と、3の付く数字のときだけアホになります。では、いきます。
イチ、ニ、さぁん!シ、ゴ、ろくぅ!ヒチ、ハチ、きゅうぅ!

ジュウ、ジュウイチ、じゅうにぃ!じゅうさぁん!ジュウシ、じゅうごぉ!ジュウロク、ジュウヒチ、じゅうはちぃ!ジュウキュウ
ニジュウ、にじゅいちぃ!ニジュウニ、にじゅさぁん!にじゅしぃ!ニジュゴ、ニジュロク、にじゅひぃちっ!ニジュハチ、ニジュキュウ

さぁんじゅう!さぁんじゅいちぃ!さぁんじゅにぃ!さぁんじゅさぁん!さぁんじゅしぃ!さぁんじゅごぉ!さぁんじゅろくぅ!さぁんじゅひちぃ!さぁんじゅはちぃ!さんじゅきゅうぅ!

ヨンジュウ~!
ヘ~イ!」


「3の倍数ネタ」と全体構造が似ているのが、ピコ太郎さんのリズムネタ『ペンパイナッポーアッポーペン』です。
ネタの序盤で「ボケの構造」を提示して、終盤で構造が原因となって「連続した構造(畳みかけるようなボケ)」を作り出しています。
破裂音(パ行)の英単語で意味不明な単語を作り出し、最終的には組み合わせることで連続した破裂音で心地よいリズムが生まれています。

ピーピーエーピー
アイ ハブ ア ン アイ ハブ アン アッー アーン アッン!

アイ ハブ ア ン アイ ハブ ア イナッー アーン イナッン!

アッン イナッン アーン イナッーアッン!

イナッーアッン!


用語


ネタの「起」の部分を「つかみ」と言い、「承(・転)」を「本ネタ」と言い、「結」を「トリネタ」と言います。
「つかみ」は最初に観客の心をつかむ、「本ネタ」は話の根本(メイン)、「トリネタ」はトリ(ラスト)といった感じです。
「つかみが長い」と言われたとしたら、例えば漫才中にコントをする場合はコントに入るまでの説明の部分(「起」)が長いということになります。
「つかみ」が長い(一分を超えたりする)と、早く面白い展開が見たい観客にとっては退屈な時間が続くことになります。
ただし10分も超えるようなネタをする場合は、ショートネタ(1分ぐらいのネタ)に比べ必然的に「起」の部分が長くなります。
ちなみに、テレビに出演するためのネタを作る場合、「つかみ」が長いとショートネタに向きません。

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