「ダークナイト」の感想

映画「ダークナイト」の感想を。
すでに映画館で公開されてからずいぶんと経つので、いまさら感がありますが、テレビ放送されたので書きたくなりました。
もしかしたら、そんなことぐらいすでに語られているよ、ってところがあるかもしれません。
あとネタバレも。

まず、テレビ放送を一回しか見ていないので記憶の間違いがあるかもしれませんが、ゆるしてください。

「悪者を殺すことは良いこと」なのか?
バットマンという正義のヒーローは、ジョーカーという悪者をバイクでひき殺せない上、高所から落とした際には助けるシーンがあります。
この映画は「正義(平和)のためなら悪者を殺してもかまわない」という「本末転倒な正義」に対して疑問を投げかけています。

一般市民が乗った船と囚人が乗った船に、お互い相手の船に仕掛けられた爆弾の起爆スイッチを持たせたシーンがありました。
起爆スイッチを押せば自分たちの命は助かる仕組み。だけど、相手を殺すことになる。どちらの人たちが押すのか?結局、どちらも誰も押さない。
悪者を殺してでも一般市民が救われていいのか?という疑問を投げかけています。
これはバットマンのような正義をつかさどる立場ではなく一般市民レベルに置き換えて、市民と悪者のどちらの命が大切なのか?ということをこの映画を観る人に考えさせていました。
映画では、どちらの命も「公平」という答えに落ち着きました。

この映画は今のアメリカが行っている凶悪犯を殺害する行為に対して疑問を投げかけているのでしょう。
二つのビルに飛行機を突っ込ませた人たちや大量破壊兵器を持っているとうわさされた人たちなど、正義のためなら市民の命を脅かす凶悪犯を殺してもいいのか?という国民に対する問いかけになっています。
もちろんどこの国でも当てはまると思います。
死体の上に平和を築いていいのか?
物語の細かいところで政府(軍)や市民に対して社会の正義について今一度考えてみませんか?というメッセージが込められているように思えます。

この映画を観て違和感を持ってしまったのは、たぶんそのへんが影響しています。
正義のバットマンが悪者のジョーカーを倒すアクション映画だと思って観始めたら、実際は悪者の命は大切か?みたいな展開が割り込んできます。
バットマンがジョーカーをバイクでひき殺せず転倒するシーンなんかは、一見するとバットマンが自分から転倒しておいて窮地に陥るダサダサなシーンに見えます。
でもあれはジョーカーにバイクで近づく寸前まで殺すのか殺さないのか?を悩んだ末、やっぱり殺さないと決め、急にハンドルを切ったことで安定性を失い転倒した、という苦悩の極限を映画監督は訴えたいのでしょう。
また、バットマンは敵が放った犬にあっさりと噛み付かれるシーンもダサダサに見えます。
メンタル的な弱さはバイクシーンで、そしてフィジカル的な弱さは犬に噛み付かれるというシーンで表現しているのでしょう。
バットマンといえども中身は人間で、完璧ではないということの表現しています。
その主人公像を読み取れるかどうかで、この映画の評価が違ってきます。

物語の終盤には、追い詰められたバットマンはジョーカーを高所から落とす形勢逆転のシーンがありました。
でもバットマンは落ちていくジョーカーを助けました。「二度目の殺すチャンスだった」はずなのに、です。
「殺す」ことをギリギリで考え直してバイクで転倒したシーンとは違い、高所から落としたジョーカーを「助ける」という展開がバットマンの、この映画の「真の答え」を表現しているように見て取れました。
物語の中盤で取調べ中にジョーカーをボッコボコにした「狂気」が入ったバットマンも、やがて最後には「真の答え」を導き出すという正義感自体が起承転結に富んだ展開として描かれていました。

善良な人間を悪者に陥れることがジョーカーの目的であり、それを証明するためにバットマンにバイクで自分をひき殺させようとすることや、船の上で相手の船を爆破させようしましたが、それぞれの計画は失敗に終わりました。
でも善良だったハービー・デントを悪人に陥れることに成功し、このバットマンとジョーカーの戦いを引き分けに終わらせることでそれぞれのキャラを立たせつつ、善悪の表と裏が表裏一体で紙一重の差なんだと伝えたかったのではないかと思います。

いまアメリカは凶悪犯の掃討作戦に多額の費用をかけ、たくさんの人の命を奪っています。
そうした背景がアメリカ国民からすれば「うんざり」しているのだろうと思います。
ハービー・デントのように最愛の人を奪われたらやり返す、人なんて一瞬で悪人になってしまうから気をつけようよ、と警告しています。
また、正義のためには莫大な予算がかかるといった表現や、政治家を持ち上げる展開など、この映画にはアメリカ国民の心理を突いた展開が盛り込まれています。
そこで「ダークナイト」に共感したことが、評判が良かったことや興行成績が良かったことにつながったのではないかと思います。

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