「27時間テレビ」ナイナイ岡村のバスケ問題

2011年放送、バラエティ番組『FNS27時間テレビ』で、共演者がお笑いコンビ・ナインティナインの岡村隆史さんに対して、バスケットボールをぶつけ続ける映像が放送された。
その異様なまでの光景を見た視聴者が、ネット上で「イジメ」だとして、岡村さんにボールをぶつけた共演者への怒りが収まらない。

その問題が起こったのは、三人対三人でバスケットボールをする企画。
というより、表向きはバスケ企画で、実際には同局放送の『めちゃ×2イケてるッ!』で見かける「悪乗り」で笑いをとる企画でした。
バスケをしている最中に、共演者が岡村さんに対して一方的にバスケットボールをぶつけ続ける展開で、それを見た視聴者なら誰もが心を痛める光景でした。

人にボールをぶつけ続ける映像という、なんとも常軌を逸した映像の裏には、スタッフの読み違えがあったのだろうと感じざるを得なかった。
ボールを人にぶつけることで笑いを起こすという単純な展開だけを期待してはいなかったはず。
スタッフが期待していた「本当の展開」は、こうだったのだろうと思う。
バスケを始める。
岡村さんにボールがまわされない。
岡村さんがボールをまわされないことを共演者に訴える。
SMAPの中居さんを始め共演者は気のせいだと一点張りし、くすくす笑いが起こる。
岡村さんが腑に落ちないまま、バスケが再開。

岡村さんに、ジャルジャルの福徳さんきっかけで次々とボールがぶつけられる。
岡村さんがなんかおかしいやんっ、などと抗議するが、共演者は取り合わない。
岡村さんが「頭にぼっこーーーんってボールが…」みたいな感じで、面白い表現を交えながら被害状況を説明し、共演者がこらえ笑いをする。
その後、バスケが再開。

やはり岡村さんにボールがぶつけられる。
ついに岡村さんの「キレるボケ(キャラ)」に入り、スタジオは大爆笑に包まれる!
ここでベストな展開なのは、『めちゃイケ』にも登場した吉本新喜劇の未知やすえさんのようなキレ芸をすることだった。
一人ずつ名指しして、ブチキレながらダメ出しをする。
そして最後に、福徳さんにキレながら、言い争いつつ二人が近づいていって……キス。
スタジオ一同爆笑し、「キスオチ」を待っていたかのようにCMに入る。

岡村さんにボールをぶつけるということは、台本通りなのでしょう。
みんなでぶつけてくださいと言わんばかりに、大量のボールがカゴに入れられていたし、実際投げていた。
中居さんが言葉で追い込んで、福徳さんきっかけで次々ボールがぶつけられ、そして岡村さんの面白いコメントというパターンが透けて見えた。

あの場にいた「お笑いを分かっている人」は、岡村さんがキレて笑いを起こすのを待っていたのだろうと思う。
岡村さんがキレるということ自体は台本にはなく、あくまで空気を読んでやってもらうというのがスタッフ(構成作家)さんの筋書きだったのでしょう。
でもなかなか岡村さんはキレなかった。
CM前まで“溜めてから”キレようと思っていたのかもしれない。
生放送だけに時間の調節が難しいので、キレるタイミングを見計らっている、誰もがそう思って待っていた。
でも岡村さんはキレるどころか、不安げな表情を終始浮かべているだけだった。
なぜか?
共演者やスタッフさんにとって、とんでもない計算外が発生していた。それは…。

岡村さんが守りに入ってしまっていた。

お笑い界で長きにわたって仕事をしている岡村さんであれば、あの状況で「キレて笑いを起こすボケ」は当然知っていたはず。
でもヘタにキレるボケをすれば、スベってしまうんじゃないかということが頭をよぎり、キレるにキレられなくなっていたのでしょう。
また、キレるとしても、どう面白い方向へ持っていくのか、どうオチをつけるのか、とっさには思いつかなかったのかも知れない。
そして、あの問題のシーンのように、一方的にぶつけられる映像がお茶の間に放送されてしまった。

共演者がボールをぶつけたのは、岡村さんが要所要所で面白いコメントをして笑いをとりつつ最後にキレて爆笑が起こり、ボールをぶつけた行為もすべて岡村さんが爆笑を起こすための「フリ」になるはずだった。
つまり、岡村さんの「おいしい見せ場」を作るための布石になるはずだった。
でも岡村さんが笑いを起こさなかったため、共演者が一方的にボールをぶつけ続けるだけのひどい映像になってしまった。
特にひどいぶつけ方をしたジャルジャルの福徳さんの場合、二人が面白い言い争いになっていれば、ぶつけていた行為も二人が絡んで笑いを起こすフリになるはずだった。
あの二人の絡みは面白い、そうお茶の間に映るはずだった。

スタッフの完全な読み違えなのでしょう。
岡村さんがあそこまで生放送やアドリブに弱いとは思っていなかったのでしょう。

また、今回の問題に拍車を掛けたのは、以下の二点が挙げられる。
一つ目。
ザ・ドリフターズさんの『8時だョ!全員集合』や『ドリフ大爆笑』でも、おもいっきりしばいたり水の中に突き落としたりする行為は多々あった。
どれだけひどい行為も「コント」だと分かるような設定になっていた。
セットがあってカツラをかぶって、劇をしているのが一目瞭然。
一方、『めちゃイケ』は「アドリブ風コント」というお笑いを知らない人にとっては完全にアドリブでしていると誤解されるやり方をしている。
普通のやり取りの中に、台本で決まっている展開を持ち込む。
でも台本があるとは「読めない」視聴者は、「本気」でやっていると思う。

二つ目。
問題が大きくなった背景にはバスケットボールを使ったことが原因に挙げられる。
あのバスケットボール特有のズシリとくる重さは誰でも想像でき、岡村さんにぶつけられたときの痛さも想像できる。
また、精神的な病から復帰して間も無い岡村さんだっただけに、余計にひどい印象が生まれた。

スタッフは岡村さんが生放送やアドリブが弱いというだけでなく、視聴者があの企画を視て、どう思うのかといったことでさえも読み違えていた。

岡村さんにとっては、自分が面白いコメントで切り返して笑いに持っていけなかったことが痛恨の極みだろうと思う。
岡村さんが爆笑をとることを信じて、共演者がボールをぶつけにいってることぐらい分かっていたはず。
でも共演者の「必要悪」を面白い方向へ還元できなかった。
そのため共演者をただボールをぶつけ続ける悪者にしてしまった。

あの場にいた共演者は、本当はぶつける行為自体で面白さを作りたかったのではなく、ぶつけたあとの岡村さんの切り返すコメントで面白さを作りたかったはず。
ダチョウ倶楽部さんのように、上島さんが熱々のおでんを食べさせられたあと、キレたことによって笑いが起こる。
「理不尽な目に合わされた人が切り返す面白いコメント」というお笑い手法が、今回の企画の骨格だった。
その手法も、岡村さん一人では荷が重すぎたということでしょうか。
誰もが矢部さんさえいれば…、そう思ったに違いない。

スポンサーリンク