売れる女性アイドルの法則

いまテレビでAKB48さんが脚光を浴びていますが、人気アイドルになるためにはどうすればいいのか?
その謎を解き明かします。

1980年代にはアイドルがたくさんいて、ヒット曲もたくさんありました。
人気曲を口ずさんだり、振り付けをマネしたり、学校では共通の話題としていたのではないでしょうか。
アイドルに興味を持つこと自体、誰も違和感などは感じなかったでしょう。

それが90年代に入って、それまでのアイドル的な曲を歌う歌手は消え、安室奈美恵さんやSPEEDさんやMAXさんのような「カッコいい路線の曲」が人気になっていきました。
その90年代後半にモーニング娘。さんが誕生しました。
モー娘。さんが人気が出た理由は三つ。

一つ目は、普段アイドルに興味がない人たちも、アイドルの結成からCDレコーディングの舞台裏まで取り上げるという目新しい企画に興味を惹かれたからでしょう。
女の子たちが企画を通して精神的に追い詰められていくシーンが、お茶の間を釘付けにしたのでしょう。

二つ目は、80年代のアイドルはかわいさを売りにするため、キャラクターを作っていたのに対し、モー娘。さんはメンバーの個性を重視して素のキャラクターを大切にしていました。
とんねるずの石橋さんとSMAPの中居さん司会『うたばん』では、これでもかというくらいメンバーがいじり倒されていました。

三つ目、これが一番重要。
モー娘。のデビュー曲は典型的な「アイドルソング」を歌っていました。
この「アイドルソング」は何かというと、アイドルはかわいらしさを売りにしているから、メロディーはさわやかな感じかポップな感じで、歌詞は恋愛に関わる内容をしていることを指します(※造語です)。
アイドルソングの歌詞は、ファンに対して「あなた(ファン)が好き」とか「デートをしている」といった風に受け取れるような「思わせぶり」なものが多いのです。

ただ、この「アイドルソング」は売るのが非常に難しいのです。
なぜなら、メロディーがさわやかなためインパクトに欠けるという問題が発生します。
どうしてもさわやかさを売りにしているから、とんがった感じにはできません。

「アイドルソング」は売るのは難しくなった原因としては、90年代に入って80年代中に洋楽に影響を受けた作曲家(※小室哲哉さんなど)が、洋楽テイストの曲を次々と出し始めたこと。
世の中の人がとんがった曲に興味を持つようになってしまったせいで、アイドルソングを歌う典型的なアイドルの需要が終わりを迎えていました。

じゃあ、アイドルであるはずのモー娘。さんの曲が売れた理由はなぜなのか?
それはアイドルだけれども「アイドルソング」を歌わなかったからです。
これはプロデューサーのつんくさんが、80年代にいたようなアイドル像にとらわれなかったのが良かったのだろうと思います。
以下はモー娘。さんのデビューシングル。

メロディーがさわやかですよね。
歌詞も「モーニングコーヒー飲もうよ 二人で」って「思わせぶり」ですよね。

モーニングコーヒー

で、以下。
デビューから3枚目のCD。
アイドルなのに「アイドルソング」ではない曲へ。

「抱いて」とくるわけなんですよ。
「抱いて 抱いて 抱いて ah」なんですよ。
「ah」って熱い吐息が出てるんですよ。
メロディーもデビュー曲とはまったく違い、さわやかさはどっかに行っちゃって、とんがってますよね?

そしてモー娘。さんを国民的アイドルグループにした曲は以下。

恋愛系の歌詞でもOL向けのなんですよね。
PVもはじけすぎ。

LOVEマシーン

これがアイドルが売れる法則なんです。

時は経て、AKB48さん。
『会いたかった』でデビュー。
会いたかったも典型的な「思わせぶり」な歌詞をしてます。

そしてAKBの名を世の中に知らしめたのは以下の曲。


メロディーやPVはカッコイイ路線だし、歌詞も「恋愛(思わせぶり)」ではなく「応援」するような内容です。
かわいさを売りにはしていないんですよね。
Perfumeさんもインディーズ時代はかわいい路線で、いまはテクノでかっこいい路線をしています。
結局、売れたアイドルは、デビューから大きく変わっちゃってるんですね。

アイドルがデビュー後に大きく変化する理由はなぜか?
それは「アイドルソング」を歌わせて典型的なアイドルとして売り出したけど売れなかったため方針転換を迫られたからなんでしょう。
じゃあ、何で音楽事務所は典型的なアイドルで売りに出すのか?
典型的なアイドルはかわいさを売りにしてるから「愛嬌がある」ので、アイドル好きのファン、いわゆるオタクの気を惹きやすいという利点があります。
衣装はセーラー服やふりふりのかわいらしいもので華やかさがある。
アイドル好きのファンは熱心なので、飽きっぽい一般的な日本人を相手にするよりかは興味を持ち続けてくれます。
そしてなによりお金をつぎ込んでくれます。

一方で、一般的にはアイドルにハマるのには抵抗感があります。
そのあたりはアニメと共通しています。
子供の頃はかわいらしさを売りにしているものに興味を持っていても誰もおかしいとは思いません。
でも大人になるにつれてアイドルやアニメのような子供っぽいことに興味を持っていると変に思われます。
だから、大人になるにつれてかわいらしいアイドルではなく、かっこいい歌手に興味を持つようになります。
その大人になったらかっこいい歌手に興味を持つという価値観が一般的なので、中高生ぐらいになるとアイドルやアニメにハマっていることがおかしなことと思われます。
80年代はかわいらしいアイドルでもヒット曲があったので学校でも共通の話題として成立していました。
それが90年代に入って世の中の価値観が大きく変化して、典型的なアイドルよりかっこいい歌手に興味の対象が移行しました。
90年代に日本に洋楽テイストの曲が入ってきて日本人の感性が変わり、かっこよさを求めるようになったのが一番の原因なんでしょう。
でもかっこいい路線で売り出すとかわいさを売りとしないから「愛嬌がない」ので、アイドル好きのオタクの気を惹けません。
つまり、典型的なアイドル路線でやると、デビューしたては熱心なファンが付きやすいけど、「アイドルソング」を歌うため爆発的な人気が出ません。
逆に、かっこいい路線でやると、デビューしたては熱心なファンが付きにくいけど、とんがった曲を歌えるため爆発的な人気が出やすいということ。
確か教育テレビで秋元康さんが「壁があったら乗り越えるんじゃなくて別の道を探す」みたいなことを言っていました。

AKB48の戦略! 秋元康の仕事術 (田原総一朗責任編集)
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AKB48さんも結成当時は典型的なアイドル路線をしていた。
パッと見はクラスにいるかわいい女の子のような身近に感じるような雰囲気で売り出していました。

会いたかった(初回生産限定盤)(DVD付)

けど、そのせいでなかなか人気が出ませんでした。
もしプロデューサーの秋元さんが壁を乗り越えるという考え方をしていたら、なにがなんでも典型的なアイドル路線にこだわっていたのだろうと思います。
でも秋元さんは壁を乗り越えずに別の道を探した。
その答えが「RIVER」だったんだと思います。
AKBが吹っ切れた曲でした。
かわいい路線にこだわって売るんじゃなくて、かっこいい路線という道もやってみよう、と。
結果、おおあたり。
「RIVER」以降は、とにかくインパクト重視でした。

神曲たち(DVD付)

セクシーなランジェリー姿で女の子同士でキスするPV、手や頭が切れるPV、ドラマではヤンキーを演じる。
どれをとっても結成当時のクラスにいるかわいい女の子という雰囲気は脱ぎ捨てていました。
秋元さんの戦略としては「いかにギャップを作り出すのか?」なんだと思います。
「ギャップ」がなければ、それは空気と同じで何も感じないし、飽きっぽい世の中の人の興味を引くことなんかできない。
その戦略はPerfumeさんでも同じことが言えて、かわいい女の子三人組がツンとして表情で、電子音で歌うかっこよさがあります。

GAME

ヒット作が出たら世の中の人の「刺激欲のスイッチ」が入ります。
人間には「刺激欲のスイッチ」があって、何か目新しいもの(者・物)に興味を持つと、興味意欲が極端に強まります。
世の中がその興味意欲が強い状態にあれば、元のかわいい路線でやっても世の中の人は興味を示してくれるようになります。
いまAKB48が「会いたかった」を歌うと、デビューしたての頃とは世の中の反応がまったく違っていて、「アイドルソング」でも興味を持ってくれるまでになっています。

そして…。
だったら最初からアイドルをカッコイイ路線で売り出せばいいじゃないか。
その答えが欅坂46さんの『サイレントマジョリティー』につながったのだろうと思います。


AKBの「RIVER」を彷彿とさせる歌詞(困難に立ち向かう)やプロモーションビデオ(暗く、激しく、そして力強く)。

サイレントマジョリティー

売れるアイドルになるためには「脱アイドル」が求められると言えるのではないでしょうか?
ということは、現在 典型的なアイドルをしている人(グループ)はどうするのか?
事務所が一番 頭を悩ますところだろうと思います。
それでもこだわるのか、それとも路線変更するのか。
路線変更することで急激に人気が出るかもしれないですが、失敗すればファン離れが加速するハイリスクハイリターンの賭け。
ファンとしては急激に人気が出ればテレビで見れる機会が増え、うれしさ倍増。
でも清純なイメージをぶっ壊されるかもしれない。
難しいところです。

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